海外不動産節税-所得税の損益通算を利用した節税スキーム封じ
令和2年度税制改正大綱により、「国外中古建物の不動産所得に係る損益通
算等の特例」が新設されました。これによって、令和3年以降の各年において、
海外不動産を活用した、節税スキームが利用出来なくなります。
【背景】
投資目的で海外中古不動産を購入した富裕層等は、減価償却の簡便法を利用
して、多額の減価償却費を計上し給与所得等と損益通算する事で、所得税を減
額させる節税スキームを利用する事が出来ました。
しかし、本改正の以前から日本の減価償却の特例を、海外中古不動産に利用
するのは合理的ではないとされていました。
例えば、下記の簡便法を、法定耐用年数の全部を経過した木造住宅の海外中
古不動産で利用した場合、減価償却期間は4年で年間の減価償却費が多額とな
り、不適切な損益通算を利用出来るためです。
●中古資産の耐用年数(簡便法)
(1)法定耐用年数の全部を経過した資産
その法定耐用年数の20%に相当する年数
(2)法定耐用年数の一部を経過した資産
その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に経過年数の20%に
相当する年数を加えた年数
【改正概要】
上記の背景があり、令和3年以降の各年において、海外中古不動産から生じ
る不動産所得に損失の金額がある場合、同不動産の減価償却費について損失の
金額のうち、同償却費に相当する部分は生じなかったものとみなされます。こ
れにより、損益通算を利用した節税スキームが封じられる事になります。
また、当該特例の適用を受けた、海外中古不動産を売却した際には、譲渡所
得の金額の計算上、同特例により生じなかったもの、とみなされた減価償却費
に相当する部分の金額は除かれます。
通常の不動産投資では、売却年まで毎年、減価償却費が計上されるため、譲
渡所得の計算上、償却期間が長いほど売却した際の譲渡所得が大きくなります。
これが本改正により、切り捨てられた生じなかったもの、とみなされた減価
償却費に相当する金額は売却時に活用される事になります。
【実務上の留意点】
本改正の最大の留意点は、改正後に取得した海外中古不動産から適用される
のではなく、すでに海外中古不動産を所有している全ての個人が対象となる点
です。
海外中古不動産を所有し、損益通算を利用した節税スキームを利用している
個人は、損益通算が出来なくなる、令和3年までに、具体的にどのような対策
を取るべきなのかを検討する事が必要です。