フィリピンは、会社設立の登録が最も複雑な国の一つとして認知されています。2017年に発表された会社設立の容易な国ランキングでは、対象国190カ国中113位でした。理由としては、各政府に提出する紙媒体の書類が膨大であること、政府の指示が曖昧であること、担当官による対応の遅延等があげられます。設立書類の作成においても、ひな形が頻繁に変わり、担当官によって要求する書類が異なることもあります。都度このような担当官の指摘に対応するためにSEC当局に足を運ぶ必要があり、会社登録には膨大な時間を要する状況が続いています。
2017年11月21日にSECから発表された通達によれば、今後は会社設立の書類チェック、申請と支払いをオンラインで行うことを義務付け、SEC当局に足を運ぶのは原本と公証書類を提出し、会社登録書類を受領する1回のみになります。このシステムはCompany Registration System (CRS)と呼ばれます。(http://www.crs.gov.ph/)
CRSによる新規会社登録の流れ:
- CRSアカウントを作成
- 会社名の認証
4日以内に確認を行い、会社名が拒否された場合、要請(Online Appeal)を行うことができます。
- CRS上フォームの記入
CRSでは会社定款およびその他の文書が取得できるため、ダウンロードを行い、印刷して書類を作成します。
- 必要書類のアップロード
- 書類の提出後
SEC担当官が書類のチェックと手続きを行います。担当官よりメールやSMSにより修正内容についての連絡があります。
- 各種登録料の支払い
SEC担当官に指示に従い、CRSを通して支払いを行います。
支払いにはLand Bank (Landbank ePayment portal)を使用し、Land Bank /BancNetアカウントがない場合、SEC, PICC, Pasay Cityにおいて支払いを行うことも可能です。支払いは10日以内に行われるものとされています。
- SEC当局に原本書類の提出
- SEC登録証明書の受領
なお、登録者は30日間以内に手続きを完了しなければ、システムから申請内容が削除される可能性があります。
一見するとCRSは大変便利な機能ですが、現状はシステムダウンを繰り返し、SEC職員も対応方法を熟知しておらず、2018年1月現在、上記のようにスムーズに登録はできておりません。2017年11月末と12月には、全ての新規会社登録手続きが止まり、SECと事業者に対して大きな混乱がありました。また、Rappler, Sunstar, philstarの12月の記事によれば、システムには毎日500件のハッキングが試みられたと記載されています。SECは引き続きDICT (Department of Information and Communications Technology) と協力して、システム環境を改善すると伝えています。
過去にBIRも独自のシステムを導入した際に、過剰なアクセスですぐにシステムがダウンし、しばらく再起不能となりました。その後システムはゆっくりとではありますが、少しずつ改善されています。引き続き、政府はシステムを強化して、無駄な処理を圧縮する傾向にあります。今後も動きがあれば随時発信していきますので、動向にご注目頂ければと思います。より詳しい情報をお求めの場合やご相談等ございましたらお気軽にお問合せいただければと思います。
以上
寄稿:株式会社東京コンサルティングファーム
インド・中国・香港・ASEAN・中東・アフリカ・ラテンアメリカなど世界27か国に拠点を有し、各国への進出や進出後の事業運営についてトータルサポートを行っている
また、新興国投資に対応したデータベース「Wiki-Investment」を提供し、30 カ国の投資環境や会社法、税務、労務、M&A実務といった内容を掲載(URL http://wiki-investment.com/)
さらに「海外投資の赤本」シリーズとして、インド・中国・東南アジア各国・メキシコ・ブラジルなどの投資環境、拠点設立、M&A、会社法、会計税務、人事労務などの情報を網羅的かつ分かりやすく解説した書籍を出版している
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