今回は海外赴任者(1年以上の予定)における確定申告の注意点を海外赴任時から帰任時の時系列に沿ってお話します。確定申告が必要な人というと給与の収入金額が2,000万円を超える方、Wワークで働いていて年末調整を行っていない方の給与の収入金額が20万円を超える方、医療費控除や寄付金控除の適用を受けたい方などがイメージしやすいかと思います。
1.海外赴任した年の確定申告
海外赴任する年に国内で2,000万円以下の給与収入がある場合、出国する日までに年末調整をする必要がありますので基本的には確定申告は不要です。2,000万円を超える給与収入がある場合や出国日までに支払った医療費控除や寄付金控除を行いたい場合は確定申告が必要になります。なお、年末調整を行う際は出国する際の現況をもとに扶養控除や配偶者控除が適用できるか否かの判断を行う必要がございます。
2.海外赴任中の確定申告
海外赴任中の確定申告については、その所得の種類により必要か否かが変わってきます。給与所得のみである場合、原則日本での確定申告は必要ありません。1年以上の予定で海外赴任をする場合は非居住者となりますが、非居住者の期間中に国内にある不動産の貸付に伴う不動産所得や国内の土地を売却することに伴う譲渡所得などがある場合は日本での確定申告が対象となります。
3.帰任時の確定申告
年の途中で帰任した場合、帰国後の勤務に対する給与収入が2,000万円以下の場合、年末調整の対象になります。この場合、給与所得以外の所得がなければ確定申告は不要です。
給与所得以外の所得がある場合、帰国前の所得と帰国後の所得をそれぞれ整理して検討する必要があります。帰国前の所得については、不動産所得や譲渡所得など給与所得以外で総合課税の対象となるものがあるかを確認します(1)。帰国後の所得については、すべての所得が課税の対象となりますので給与以外の所得があるかを確認します(2)。(1)と(2)所得合計が20万円を超える場合、もしくは帰国後の給与所得が2,000万円を超える場合は確定申告の必要があります。
今回ご紹介した内容はあくまで一例になります。海外赴任中に一時帰国した場合など租税条約を確認し、別途確定申告が必要か否か判断をする必要も出てまいりますのでご留意のほどお願いいたします。
<参考リンク>
国税庁HP
「確定申告が必要な方」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2023/01/1_06.htm
「No.1926 海外海外勤務中に不動産所得などがある場合」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1926.htm
「No.1935 海外勤務者が帰国したときの確定申告」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1935.htm
「No.2517 海外に転勤する人の年末調整と転勤後の年末調整」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2517.htm
「No.2873 非居住者等に対する課税のしくみ」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2873.htm
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<税理士法人名南経営 国際部チャンネル>
https://www.youtube.com/c/meinankokusai