
国税庁は令和4年12月に令和3事務年度 法人税等の調査実績の概要を公表しました。今回はその中で海外取引等に係るものを取り上げたいと思います。
海外取引等のある法人については租税条約等に基づく情報交換制度の活用等により厳正な調査が行われており、海外取引や外国子会社合算税制、移転価格税制に係る非違や申告漏れの件数は前年度と比べて増加しています。
1.法人税
現地の登記情報等を端緒に外国子会社合算税制の適用誤りを把握した事案
日本において調査対象となったA社は、軽課税国であるX国に100%出資の外国子会社を有していたにもかかわらず、当該外国子会社について申告を行っていませんでした。
国税庁は現地の登記情報等から外国子会社の実態を確認し、当該外国子会社について外国子会社合算税制の適用が漏れていたことが発覚しました。
<主な調査事例>
非違内容 | 申告所得漏れ金額 |
国外関連者から収受すべきロイヤリティ収入の計上漏れ | 約22億円 |
国外関連者に対して独立企業間価格より低い金額で商品を販売 | 約6億円 |
暗号資産取引を海外取引所で行うことで売却益を除外 | 約1億円 |
2.源泉所得税
外国法人に対する借入金に係る利子の源泉徴収漏れを把握
日本において調査対象となったA社は、X国の子会社からの借入金に係る利子について、当該借入金の元本に繰り入れており、実際に金銭の支払いをしていなかったことから源泉徴収を行っていませんでした。
この場合、実際に金銭の交付がされていなかったとしても、支払債務が消滅する一切の行為が「支払」に該当するため、源泉徴収が必要となります。
<主な調査事例>
非違内容 | 追徴税額 |
外国法人に支払った人的役務の提供事業の対価に係る源泉徴収漏れ | 約1億3千万円 |
外国法人に支払った使用料等に係る源泉徴収漏れ | 約6千万円 |
昨今の海外渡航制限緩和や税制改正等により海外取引等に係る調査での指摘件数は今後も増える可能性が高いです。海外取引等に係る指摘による修正申告は金額が大きくなる場合もありますので、最新の制度内容等をご確認のうえ申告内容に誤りのないようご注意ください。
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