
令和4年12月に令和5年度税制改正大綱が閣議決定されました。今回はこの中から国際税務について抜粋してお伝えしたいと思います。
1.外国子会社合算税制の見直し
外国子会社合算税制とは外国子会社等の利用による税負担回避に対処するための制度で、一定の要件に該当する場合に外国子会社等の所得相当額のうち一定額が日本親法人の所得に合算される制度です。
今回の改正で特定外国関係会社のトリガー税率が30%から27%に引き下げられます。これによりペーパーカンパニー等である外国子会社等の租税負担割合が27%以上である場合には、所得合算の対象から外れることとなります。なお、特定外国関係会社以外の外国子会社等のトリガー税率についての改正はなく、20%のままとなっています。
また、申告書作成による事務負担軽減のため、合算課税の適用がない部分対象外国関係会社の決算書添付が不要となり、トリガー税率未満の外国関係会社の株主情報については出資関係図等への記載でよいこととなります。
2.グローバル・ミニマム課税
世界的な法人税の引下げ競争に歯止めをかけるため、2021年10月OECD/G20で本制度導入について合意がされました。 所得合算ルール(IIR)、軽課税所得ルール(UTPR)、国内ミニマム課税(QDMTT)の3つの制度があり、各国において法制化が進められています。
令和5年度税制改正では、所得合算ルールへの対応として「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)」が創設されます。こちらは法人税の最低税率を15%に設定し、外国子会社の最低税率に対する不足分の税額を親会社である日本法人に課税するというものです。特定多国籍企業グループ※に属する日本法人が対象とされているため、大企業向けの制度であると言えます。
※特定多国籍企業グループ・・・直近4事業年度のうち連結総収入金額が7.5億ユーロ以上の年度が2以上ある多国籍企業グループ
また、本制度実施に向けて「情報申告制度」が創設されます。これにより特定多国籍企業グループに属する日本法人は、その構成会社の名称及び各国の実効税率、その他一定の事項を税務当局へ報告する必要があります。
軽課税所得ルール及び国内ミニマム課税については令和6年以降の法制化が予定されており、今後の動向が注目されます。