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クロスボーダーM&Aの実務 (10)-株式価値算定に係る留意事項
コラム
2021.06.28
クロスボーダーM&Aの実務 (10)-株式価値算定に係る留意事項

 第6回から第9回までは、日系企業によるクロスボーダーM&Aにおける損益計算項目の分析に係る留意点について解説した。

 第10回となる本稿ではこれまでに解説を行った会社概要、ビジネスモデル、損益計算書項目の理解を前提に、株式価値算定に係る留意点について解説を行う。

 なお、本連載コンテンツは、CaN International Groupが執筆した書籍「アジア進出企業の会計・税務 事業展開における実務マニュアル(清文社)」から抜粋、編集している。コロナ禍における株式価値算定固有の論点について更新している。

 

 株式価値算定は、買収検討開始時から株式譲渡契約締結日までの期間を通して、デスクトップ調査や対象会社との協議、各種DDの結果を考慮しながら、継続して行われる。買収価格は最終的には交渉によって決定されるが、買い手企業は高値掴みすることがないように、自社が許容できる買収価格のレンジを常に想定、更新しながら交渉に臨む必要がある。

 クロスボーダーM&Aにおける株式価値算定の実務においても、国内案件同様、(1)ディスカウントキャッシュフロー法(以下、「DCF 法」)および (2)類似会社比準法が利用されることが多い。本稿では、(1)(2)の評価手法に関して、特にクロスボーダーM&A特有の事項を踏まえて解説を行った。

 なお、DCF法、類似会社比準法以外で利用されることや、参考値とされることの多い純資産法に関してはDDにおける貸借対照表項目分析におけるポイントがそのまま留意点になるが、これについては次回以降解説を行う。

(1) DCF法

 DCF法は、対象企業又は対象事業の事業計画に基づき企業価値又は事業価値を算出する方法である。クロスボーダーM&Aの実務において最も使用頻度の高い評価手法の一つである。

 DCF法の評価要素を簡易的に分解すると、事業計画と割引率にわかれる。成長著しい新興国に所在する企業の事業計画の見積りは、日本国内の同業他社の事業計画と比較して不確実性が高いことが多い。過去の成長実績を参照しようにも、売上高が過去の実績ベースで平均年間増加率100%を超えるような事例も散見される。そのため、対象会社によって作成された事業計画は、楽観的な前提に基づくものでないかといった観点から、その達成可能性を検討することが重要である。特に、昨今においては、新型コロナウイルスの流行が対象企業の今後の業績に与える影響についても慎重に判断されたい。なお、事業計画の前提に関して疑義が生じたり、関係者の間で見解がわかれたりする場合、市場成長率の検証や、消費者インタビュー等を外部の専門家に依頼することも実務ではみられる。

 また、クロスボーダーM&Aでは企業規模や業績面と比較して売却希望価格が高い傾向にあるため、買収によって見込まれるシナジーを考慮しなければそれを上回る買収額を提示することが出来ない場合も多い。この場合、買収ありきでシナジー効果を価格に上乗せすることがないように、考慮するシナジー要因の実現可能性については厳しく検討する必要がある。

 なお、DCF法による企業価値評価にあたっては、為替リスク、インフレ率、カントリーリスクプレミアム等といったクロスボーダー特有の論点が生ずることがあるため、国内案件と比較して専門性が高くなる傾向にある。

(2)類似会社比準法

 類似会社比準法とは、事業内容や規模等が類似する企業の市場株価とその経営指標との比率(倍率)を利用して、評価対象会社の経営指標を基に企業価値又は事業価値を算出する方法である。クロスボーダーM&Aの実務においてもその使用頻度は高い。例えば、売り手からの持ち込み段階において、インフォメーションメモランダムのなかで売却希望価格はEBITDAの10倍である等、具体的に数値が事前に示されることも実務ではみられる。

 本評価手法では実務上、EBITDA倍率を採用することが多いが、EBTIDAに関しては会計利益からの調整や、正常収益力算定のための非経常項目の調整について対象会社との間で見解が分かれることも多い。

 また、EBITDA倍率の算定に係る類似企業の選定にあたって、公開市場の選定や業種判定に関して、外部の専門家の助言を仰ぐことも実務では行われている。

 なお、昨今の論点として、EBITDA倍率の算出にあたって使用した類似上場会社の業績実績や予想に含まれているコロナ禍における影響の程度を把握し、場合によっては過去の倍率を参照して数値を補正したり、サンプルから除外したりする必要性についての検討が挙げられる。

 下記図表は、日本、中国(上海)、タイ、ベトナム、米国(ニューヨーク)の主要証券取引所における2010年度から2020年度までの各取引所に上場している企業のEBITDA倍率推移を弊社が作成したものである。これによると、東証1部上場会社のEBITDA倍率は緩やかな上昇傾向にあるが、資本効率の高いアメリカ市場や、成長率の高いアジア市場と比較すると未だ低い水準にあることがわかる。

 (1)で解説したDCF法による評価結果を基本としつつ、類似会社比準法は参考値として利用することによって、高値掴みとならないように留意されたい。

(出所:SPEEDAより各市場に上場している全企業の企業価値EBITDA倍率を年度毎に抽出し、その中央値を弊社が集計。ベトナムについてはホーチミン証券取引所とハノイ証券取引所のいずれかに上場している企業を母集団としている。)

 

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前回の記事はこちら:クロスボーダーM&Aの実務 (9)-損益計算書項目 (4)その他損益項目の留意点

 


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