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クロスボーダーM&Aの実務 (5)-会社概要の把握
コラム
2021.04.21
クロスボーダーM&Aの実務 (5)-会社概要の把握

 前回(※)は、日系企業によるクロスボーダーM&Aにおける「DD費用等の会計上の処理」として、日本親会社におけるDD費用等の会計・税務処理について解説した。第5回目からは、具体的な財務DDの手続における留意点について解説を行う。本稿では、財務DDを実施するにあたって必須となる会社概要の把握について解説を行う。

 なお、本連載コンテンツは、CaN International Groupが執筆した書籍「アジア進出企業の会計・税務 事業展開における実務マニュアル(清文社)」から抜粋している。

※本稿末尾の「関連記事」参照

(1) 会社概要の把握

 財務DDのなかでは財務関連以外の会社の基本的事項についても確認することが一般的であり、それらは通常、調査報告書に取りまとめられる。基本的事項とその注意点は次のとおりである。

・株主の状況

 外資規制の要件を満たすために名義株主が登記されている場合、当該名義株主と会社の関係性および配当金額等の経済的条件を含めた株主間契約の条件を確認する。M&Aの実行にあたって、当該名義株主が株式譲渡を拒否したり、法外な譲渡価格を要求したりすることがあるため注意する。

 

・役員の状況

 適切な能力・経験・権限を有する人材が取締役に就任し、各取締役の担当分野が明確になっていることを確認する。オーナー企業では、既存株主の親族など、勤務実態のない取締役も散見されるため留意が必要である。

 また、現地の制度上、居住取締役の設置が義務づけられている国がある。居住取締役が名義貸しのみである場合、滞りなく解任できる契約となっているかといった点や、後任の居住取締役の手配を検討する。

 

・資本金・株式

 法令上必要な払込資本が適時に全額払い込まれているか確認する。また、普通株式以外の種類株式の有無を確認し、種類株式がある場合、発行の理由や条件を把握する。

 

・住所

 実際に事業を行っている住所と登記住所が同一であるか確認する。異なる場合、その背景を把握する。

 

・事業活動

 登記上の事業活動内容と、実際の事業活動が相違ないことを確認する。その他、当該事業活動が外資規制の適用対象であるかといった観点からも検討が必要である。

 

・組織の状況

 組織図をもとに各部署の人数構成、人員配置や権限者の情報をまとめる。特にキーパーソンの把握が重要である。

 

・従業員の状況

 年齢、勤続年数、男女比、基本給を調査する。離職率が高い場合は、その背景を確認する。

(2) 経理体制の確認

 経理体制については、一般的に次の項目を中心に把握する。

・請求書や伝票の管理、出納業務、会計記録の記帳、月次や年次の税務申告、年次の決算書の作成等、主要な経理業務の管理者と担当者

・出納業務について、小口現金の管理方法や、銀行口座の引出し権限者

・経理業務の一部を外部の会計事務所に委託している場合は、委託先と委託内容

・月次決算、年次決算の締め日や、各種税目の申告タイミング

・会計システム、および販売システムや購買システム等、会計システムとその他の主要なシステムとの関係

 また、M&A後を想定して、本社に対して適時に財務報告を行う体制や連結決算体制の構築を検討しなければならない。対象会社の所在地国(地域)や業種、オーナー経営か否かなどによって状況は異なるものの、新興国企業は、適切な財務報告プロセスが構築されていないケースもある。

(3) 会計方針の確認

 対象会社が財務諸表の作成にあたって実際に採用している会計処理の基準を個別具体的に把握し、現地会計基準への準拠性を確認する。新興国企業においては、現地で法定監査を受けていても監査法人の監査の品質にばらつきがあることから、適切な監査手続が実施されていないケースも多い。そのため、無限定適正意見が表明された監査報告書を入手できたことをもって、安易に現地会計基準への準拠性に問題がないと判断するべきではない。

 また、M&A後に自社が日本で日本基準に従って連結決算を行う場合、対象会社の決算を日本基準に組み替えるか、もしくはIFRSに組み替えたうえで実務対応報告18号「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」で定められている必要な調整を行うか、といった対応についても具体的な作業フローを念頭に検討しなければならない。

(4) その他管理体制の不備等

 財務DDのなかで検出された管理体制上の問題について、定量化が不可能な項目についても取りまとめる必要がある。把握された管理体制上の問題は、PMIを見越して、M&A実行後の対応を検討することとなる。新興国企業では、管理体制上の不備が散見されるケースが多く、下記はその例である。

・現金支出による費用等

 請求書、領収書等の根拠資料に基づかない支払が散見される。二重払いや、会計上二重計上されている費用が発生している。

 

・原価計算

 仕掛品が計上されておらず、完成品の原価計算も適切に行われていない。製品単位当たりの製造原価の算定に必要なデータが整備されておらず、適切な売上原価、在庫金額の算定が困難である。

 

・補助簿等との不一致

 会計帳簿と各種台帳や証憑が一致していない。各種基礎資料と会計数値の照合が月次、四半期で行われていない。

 

・人件費関連

 簿外で従業員が存在していたり、脱税目的等で給与や手当が現金で支払われていたりすることがある。これらの簿外人件費は会社の利益の修正要因となる可能性があるほか、社会保険料、源泉所得税が適切に納付されていない場合には、未払社会保険料、源泉所得税の支払債務が存在する可能性がある。

 

★関連記事★

前回の記事はこちら:クロスボーダーM&Aの実務 (4)-DD費用等の会計処理

続きはこちら   :クロスボーダーM&Aの実務 (6)-損益計算書項目 (1)ビジネスモデルの理解


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