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クロスボーダーM&Aの実務 (2)-財務DDの具体的な進め方(前半)
コラム
2021.03.31
クロスボーダーM&Aの実務 (2)-財務DDの具体的な進め方(前半)

 前回(※)は、日系企業によるクロスボーダーM&Aにおけるアジア地域への注目の高まり、および財務DD の重要性について解説した。第2回目となる本稿では、財務DDの具体的な進め方(前半)について解説を行う。

 なお、本連載コンテンツは、CaN International Groupが執筆した書籍「アジア進出企業の会計・税務 事業展開における実務マニュアル(清文社)」から抜粋している。コロナ禍におけるクロスボーダーM&Aにかかる財務DD固有の論点について更新している。
※本稿末尾の「関連記事」参照

(1) 調査範囲

 財務DDは、会計監査のように一般に公正妥当と認められる監査の基準に基づいて実施されるものではなく、買い手企業と財務DDを実施する専門家の間で合意した調査範囲および調査手続に基づき実施される。また、買い手企業が経営上の目的を達成するために行うM&Aの実行判断に資する情報提供という観点から実施されるため、調査範囲を決定する前提として、案件の背景、買い手企業の戦略について買い手と専門家の双方で共有することが重要である。

 特に、クロスボーダーM&Aは、金融機関、ファイナンシャル・アドバイザー(以下、「FA」という)や仲介会社から持ち込まれた案件をもとに検討を開始することが多く、買い手が当該国のマーケットに係る固有事情に精通していない場合には、対象会社をゼロベースで検討することになる。そのため、単に会計・税務的な観点からのみでなく、対象会社の取引先やビジネスモデル、製品の優位性等といった利益の源泉を明らかにすることもまた、財務DDに期待されている役割である。

 

財務以外の領域におけるDDの検討

 案件の特性に応じて、ビジネスDD、法務DD、ITDD、環境DDといった財務以外の特定領域についてDDを実施する場合がある。それぞれの領域について対象会社が抱えるリスクに留意しつつDDを進めながら、必要に応じて外部専門家からのアドバイスを得ることが重要である。

 

ベンダーDDの利用

 昨今のクロスボーダーM&Aにおいては、対象会社がすでに自社のDDを第三者に委託し、実施しているケースが増加している。これはベンダーDDもしくはセラーズDD等といわれている。ベンダーDDが実施されている場合、当該DDレポートによって対象会社に関して相当な事前情報が提供されることもある。ただし、ベンダーDDはあくまでも対象会社側が委託した専門家が実施するものであり、買い手企業においては自社が実施するDDの補完的位置づけとして利用すべきことに留意されたい。

(2) 財務DDチームの編成

 一般的に、DDを進める場合、買い手企業はFAやその他の専門家と協議しながらDDチームの編成を行うこととなる。チーム編成のなかでも、財務DDに関しては外部の専門家に依頼することが一般的である。クロスボーダーM&Aでは、専門家の選定にあたって、次の5つのパターンが実務上よくみられる。

 

① 日本の大手監査法人もしくは同一グループのコンサルティング会社(いわゆるFAS会社)に依頼し、当該依頼先が現地提携先の大手国際会計事務所の管理監督を行う。

② 直接現地の大手国際会計事務所グループに所属する会計事務所に依頼する。

③ 現地の日系会計事務所に依頼する。

④ 日本の独立系コンサルティング会社に依頼し、当該依頼先が各国における日系・非日系会計事務所と連携して実務を行う。

⑤ 現地の非大手・非日系会計事務所に依頼する。

 

 それぞれのパターンにおいて期待される品質、報酬水準、日本語サポートの有無が異なるため、案件の規模や特性に応じて使い分けることが望ましい。現地の独立系会計事務所やコンサルティング会社は、現地の記帳・税務業務を主な業務としており、M&A関連業務の経験が乏しい場合があるため、③ ~⑤ のようなケースでは、担当者のM&A関連業務の経験を確認しておく必要がある。

(3) 調査日程

 調査日程については、基本合意書で定められている場合もあれば、取引実行、株式譲渡契約との兼ね合いから事実上特定の期間に限られている場合もある。通常、調査スケジュールはタイトであり、特に入札案件の場合、調査日程はさらに短くなる。そのため、調査期間に応じて効果的かつ効率的なDD計画を立てなければならない。

 なお、調査日程中に対象会社に係る重要な事象が検出された場合、それがディールブレーカー(M&A断念の要因)となることもあるため、定期的にミーティング等による情報交換を行い、特に重要な検出事項については随時、関係者間で情報を共有すべきである。

(4) 調査方法

 通常、調査は、財務諸表を含む各種資料の確認、経営者や担当者へのインタビュー、工場や在庫等の現物確認を行う現地視察によって行われる。なお、会計監査で行われるような残高確認等は、特段の必要性がある場合を除き、実施されることはない。

 

① 各種資料の確認

 資料の閲覧は、現場における資料の原本確認やコピーの確認・入手に加えて、データルームを通して行うことがある。なお、クロスボーダーM&Aは入札になるケースも多く、その場合、現地での原本確認や視察は行えず、データルームのみが用意されることも多い。

 

② コミュニケーション

 対象会社とのコミュニケーションは、経営者・各部署の責任者・経理担当者に対して直接行われるインタビューや、クエスチョネア(質問書)の送付と回答の入手によって行われることが一般的である。

 インタビューやクエスチョネアは英語で行われるケースが多いが、回答者が現地語しかできない場合、通訳者や翻訳者を雇う、もしくは現地専門家を通して行うことが一般的である。コロナ禍で渡航ができない状況下では、ビデオ会議アプリケーションを使用してインタビューを行うケースが増えている。

 

③ 現地視察

 必要に応じて、事業所・工場等の見学、固定資産や棚卸資産の現物確認や実査を行う。なお、入札案件の場合、現地でのインタビューは実施できても工場内に入ることは許されず、現地視察が行えないこともあるため、書類確認によって補完する必要がある。

 昨今のコロナ禍の情勢を踏まえて、ドローンを使用した撮影、対象会社担当者の撮影によるバーチャルツアーを利用するケースや、現地にあるコンサルティング会社、会計事務所に現地視察の代行を委託するケースもある。

 

 

★関連記事★

前回の記事はこちら:クロスボーダーM&Aの実務 (1)-近年のクロスボーダーM&A のトレンド

続きはこちら   :クロスボーダーM&Aの実務 (3)-財務DDの具体的な進め方(後半)


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