
コロナウイルスの流行に伴い、海外赴任中の駐在員が一時帰国した場合の183
日ルールの適用などにより租税条約という言葉を目にする機会が増えたので
はないでしょうか。今回はその租税条約の概要について記載致します。
原則的には、長期間の海外赴任中の駐在員は日本の非居住者に該当するため、
海外での勤務に起因する給与については、日本の所得税は課税されません。
ただし、今回のコロナウイルスなどにより一時帰国し業務を行っている場合
では、国内での勤務に起因する給与となり「非居住者に対する国内源泉所得」
として日本の所得税が課税されます。
一方で、一般的にはその赴任先の海外では、その国の居住者であるため国内
勤務、国外勤務を問わず全世界所得課税として、その給与全額について課税さ
れます。その赴任者からすると、給与の額は変わらないのに赴任先の国でも日
本でも課税されることになり、いわゆる二重課税の状態が発生することとなり
ます。
この二重課税の発生を排除することを目的として、両国間にて定められたも
のが「租税条約」となります。一定の要件を満たす必要はありますが、短期間
(一般的には183日以下)での滞在について課税することは、両国間にとって
も良い影響はないため、課税を免除することを「租税条約」の条項に定めてい
ます。
今回は給与について取り上げましたが、租税条約は給与のみではなく利子や
配当、使用料についての課税権などについても定められております。
注意すべき点としては、租税条約は両国間の取り決めであるため、国ごとに
よって締結されているということです。締結されている取り決めが異なれば、
内容も異なります。適用については画一的に判断するのではなく、必ず条約に
立ち戻って確認することが必要です。