経済産業省のHPにて、「日本企業のグローバル税務ガバナンス体制の整備に
向けた現状、及び検討課題の整理と9つの提言」が公表されました。
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/toshi/kokusaisozei/kokusaisozei.html
グローバル税務ガバナンスとは、企業がグローバルレベルで税に関する法令
や規則を遵守して適正に納税し、企業の経済活動の状況の変化などを通して税
コストを最適化するための体制を整備すること、と整理されています。
このグローバル税務ガバナンス体制を整備するための提言として、以下の9
つが示されています。
1.経営者の税務に対する積極的な関与を促す
2.税務ポリシー・税務戦略の策定のため内容を検討
3.税務ポリシー・税務戦略のグループ内への浸透方法を検討
4.日本親会社・海外子会社間の最適な業務分掌を検討
5.税務部門と事業部門の事前連携ルールを事業部と検討、策定
6.自社の税務ガバナンス体制に見合った人材配置の検討
7.企業全体を対象とした税務の観点の業績評価制度の検討
8.税務に関する情報の収集のための情報範囲や時期の検討
9.税務に関する情報の管理・共有について効率性を追求
この中のうち少しではありますが、実務上問題になりやすい5と8について
触れたいと思います。
5.「税務部門と事業部門の事前連携ルールを事業部と検討、策定」
税務調査の指摘で税務部門と事業部門の連携が取れていなかったと判明する
ことがあります。
実際に、国外関連者からロイヤリティを取るべき取引を事業部が税務部門へ
の相談なしに進めたことで、ロイヤリティの徴収漏れを税務調査で指摘された、
という事例がありました。これは事前に税務部門へ相談があれば防げたはずで
すので、事業部への税に対する意識付けが重要と感じた事例でした。事業部へ
税引後利益を意識してもらうよう、経営者を巻き込んで働きかけて、連携ルー
ルを策定することが税務リスクを低減させるためには必要となります。
8.「税務に関する情報の収集のための情報範囲や時期の検討」
外国子会社合算税制の検討をするための資料が不足する、特に申告書の回収
が日本親会社の申告時期までに回収できないことがあります。
例えば、現地から申告書として送られてくる資料が、実際は申告書ではない
など、現地担当者や現地会計事務所へ必要資料がうまく伝わっていないことな
どが要因として挙げられます。国によっては申告期限が長いところもあります
ので、決算終了から相当期間経過しているものの、申告が終了していないケー
スもあります。
また、今回のコロナウィルスで現地法人が在宅勤務となり、全く連絡が取れ
なくなったケースもありました。
必要な情報を必要な時期に現地法人から吸い上げるルートの整備は、今後よ
り重要になるものと感じています。