国外財産調書の提出制度とは、国外財産を有する方は、その有する国外財産
について申告する仕組みです。
具体的には居住者(非永住者を除きます。)の方で、その年の12月31日にお
いて、その価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する方は、その国
外財産の種類、数量及び価額、その他必要な事項を記載した「国外財産調書」
を、その年の翌年の3月15日までに、住所地等の所轄税務署に提出する必要が
あります。
2019年7月には「国外財産調書」の不提出(海外預金未申告)による、国外財
産調書法違反容疑で、全国で初めて告発された事件が報じられました。国外財
産調書を提出しなかった場合には、「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に
処すること」とありますが、これまで罰則は適用されてきませんでした。
この背景には、CRS(共通報告基準)の適用により、国税庁がこれまで把
握出来ていなかった“国外財産”そこから発生する収益を認識する事が出来る
ようになった事が影響していると考えられます。
CRS(共通報告基準)とは、OECD(経済協力開発機構)が定めた基準
で、国際的な租税回避を防止するために、各国で金融口座情報を共通化し、自
動交換する制度です。この基準に参加している国の金融機関は、税務上の非居
住者を特定し、当該口座情報を自国の税務当局に報告する必要があります。非
居住者の金融口座情報を報告する義務を負う金融機関は、銀行等の預金機関、
生命保険会社等、証券会社等とされています。
日本は2018年からこのCRSの適用が開始されました。そのため、今後も課
税逃れ抑制の動きは益々加速していくと考えられます。国外財産調書は、財産
債務調書と異なり、確定申告書の提出義務にかかわらず、提出義務がある場合
には、提出する必要があります。
国外財産を有する方は改めてその概要をご確認いただき、国外財産調書の不
提出とならないように十分にご注意ください。