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トピック

クロスボーダーM&Aの実務 (1)-近年のクロスボーダーM&A のトレンド

2018.05.21
CaN International税理士法人

1. クロスボーダーM&A とアジア地域への注目の高まり

 日本国内市場の成長が大きく見込めないなか、海外事業への参入や拡大を目指す企業が増加している。しかし、海外事業を成功に導くための時間的余裕は限られている。そこで有効な手法がM&A Merger & Acquisition)である。M&A では、ゼロから海外事業を立ち上げる場合と比較して、販売チャネルや生産体制の構築、人材やノウハウといった経営資源の獲得や強化を短期間で実現することが狙える。また、市場における競合企業の排除につながる場合もある。

 近年、アジア地域では現地の政府系企業や財閥系企業の存在感が増してきているほか、欧米や周辺のアジア諸国の企業による市場進出も活発化している。日本企業においても、豊富な生産年齢人口を抱え、経済成長も著しく、地理的メリットや文化的な親和性が高いアジア地域の企業に対するM&A が増加しており、クロスボーダーM&A のうち同地域におけるものは件数及び金額ベースで30 %程度を占めるといわれている。

 急速に市場成長が進むなか、競合企業に先駆けて海外事業展開を加速させるための手法としてM&A を効果的に取り入れることによって、自社のリソース不足を補完しながら海外事業を成功に導きたい。なお、本連載コンテンツは、CaN International Groupが執筆した書籍「アジア進出企業の会計・税務 事業展開における実務マニュアル(清文社)」から抜粋している。

2. クロスボーダーM&A における財務DD の重要性

(1) DD の目的と近年の潮流

 DD (Due Diligence)の目的は、対象会社の事業実態について理解を深め、内在する各種リスク要因を事前に特定することである。DD の結果を受けて、買収価格やストラクチャーの検討、M&A の実行に係る意思決定、買収契約書の作成、買収後の統合計画作成等が行われる。M&A は案件ごとに目的も異なるため、DD においてもその目的を意識しながら実施することが重要である。

 財務DD では、単なる時価や修正後純資産の算出結果のみならず、その情報提供機能が重要視されており、調査報告書には、対象会社のビジネスモデルを踏まえた重要勘定科目の主要な内容、修正項目に関する内容の詳細や修正の前提が記載されていなければならない。特に近年、財務DD はよりビジネス面を包含したものに変容してきている。本連載コンテンツでは、この潮流に対応し、従来の財務DD には含まれていなかったような、ビジネスDD に近い項目も含んで記載している。

(2) 失敗事例から学ぶクロスボーダーM&A に係る財務DD の傾向と重要性

 クロスボーダーM&A は、現地の業界動向や慣行及び対象会社のビジネスモデルに対する理解が乏しいなかで実施されるため、難易度が高いことが特徴である。事前知識や現地で得られる情報の量と質は国内案件と比べると格段に低く、また、対象会社に内在するリスク項目には、日本企業では通常想定し得ないような事象や課題が含まれることも多い。

 日本企業が実施するクロスボーダーM&A においては、従来から財務DDの甘さが指摘されてきた。財務DD が適切に行われなかったことに起因して、買収後に買収先企業の不正が発覚した事例も散見される。

 クロスボーダーM&A において、失敗を防ぐ最も効果的かつ唯一の方法は、適切なDD の実施である。M&A の検討段階で対象会社のビジネスモデルに対する理解や実態把握を疎かにし、見込まれるシナジー効果以上の高値でM&Aを実行した場合、そのM&A を成功に導くのは不可能である。DD では、対象会社に対する理解とリスク項目の洗い出しをより一層強く意識しなければならない。

本記事の執筆者
小田 英毅
小田 英毅

CaN International Advisory (Thailand) Co., Ltd. ディレクター。公認会計士。1986年、大阪府生まれ。有限責任監査法人トーマツを経て、2014年7月CaN International Advisory 株式会社入社。2015年4月より現職。現在はタイ国にて、日系企業のタイ進出に係る各種コンサルティング及び、現地日系企業に対する各種支援業務を行う。

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