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「アジア子会社の移転価格リスクマネジメント」GLASIAOUS Next 2019【開催レポート3】

2019.04.12

パネルディスカッションに引き続き、国税庁出身で大手税理士法人にて長年の移転価格の経験を持つBDO税理士法人の田村敏明氏が登壇されました。

セッション① アジア子会社の移転価格リスクマネジメント

本セッションでは、リスナーに管理職が多いこともあり、「アジア子会社の移転価格リスクマネジメント」の題名で、組織として移転価格の対応をうまく進めるためのコツを紹介する。 

まず田村氏は、日本にて移転価格の論点が言われ始めた10数年前と比べ、現在は移転価格に関係する情報がネットなどでも手に入りやすくなっている一方で、移転価格税制が世界的に整備されてきているために顕在化する課題について触れた。 

1.移転価格文書未作成リスク

アジア新興国において文書化のルールが整備されつつある。日本ではCBCR及びマスターファイルの作成は連結総収入金額1,000憶以上の会社が対象であるが、日本の親会社が作成不要でも海外子会社は現地の規制により整備が必要なケースが散見されている。
特にインドネシア・ベトナムでは現地側の文書作成義務が課される売上基準が著しく低い。実際に田村氏も、海外において移転価格文書作成が必要になった会社から急ぎの問い合わせを受けたという。「親会社は、すべての海外子会社の現地での移転価格文書化義務についても、責任を負っていると自覚すべきである」と田村氏は語る。

 同類のことが日本に進出している外資系の企業でも起きているという。日本の子会社から親会社が移転価格文書を具備しているか把握したくとも、親会社の税務部門まではコミュニケーションがとれていないケースが多く、また特に欧米系企業では分業体制であり、マスターファイルを知っている人は親会社内でも限られていることが主な要因であるという。
反対に、日本の移転価格制度について親会社から聞かれるケースが増えている。日本語の情報でも複雑であるため欧米人には説明しにくいが、国税庁がホームページで移転価格制度について英語で掲載しているページがあり、その活用が有用と田村氏は紹介した。 

2.アジア子会社に関連した税務調査リスク

日本の親会社から金融子会社を通じて海外製造子会社に貸し付けを行う場合()、「税務調査では親会社から海外金融子会社を経由した融資を迂回融資と認定されるケースがある」。支払利息の租税条約の減免措置が認められず、利息が高すぎるとして1%を超えた部分は損金不算入と判断されるおそれがある。田村氏は「金融取引も移転価格の対象ではあるが、市場金利・調達金利との比較ではなく、取引全体的として合理性があるか調査される例がある」と語った。

移転価格に限らず、東南アジア諸国の税務調査では次のリスクがあるという。
法人税の還付申請をしたことに起因して税務調査を受けることになり、想定外の追徴を受けるリスクもある。また、税務調査の最終段階で対応困難なほど膨大な資料を要求され、提出の遅延によるペナルティとして問題取引の損金算入を否認されたという、モラルを疑うようなケースも見られる。 

3.潜在的移転価格リスクへの対応

①ベンチマーキングの結果、営業利益がALP(独立企業間価格)レンジに入っていない場合の対応
子会社の営業利益がALPレンジよりも低いケースでは、所得を親会社に移転しているのではないか、という疑念を持たれるおそれがある。
対策としては、例えば突発的な要因のために利益率が下がったケースでは、それが起こらなかったと仮定した場合のPLを作成することが考えられる。何が利益率を低める原因かを分析した上で、商流を変え、ロイヤリティ、マージンの見直しなどが必要なケースもある。内部的に交渉が難しい場合は、外部の専門家を使って説得することもあるという。
他方、ALPレンジよりも高いケースでは、一般的に低いケースよりも説明はしやすいものの、テクニカルな調整が必要になることがある。具体的には、為替の影響を抜くことや、親会社からの切り出しの計算結果を提出するなどの方策があることが紹介された。 

②アジア子会社特有のリスクと対応方法
二重課税の回避のため、MAP(相互協議)による救済制度やAPA(事前確認申請)はあるが、解決まで長期間を要する。またアジアの新興国では税務当局が還付するケースが少なく、日本でも億単位でないと認められるのは難しいという。
つまるところ、「アジア子会社との取引では相互協議が期待しにくいため、課税される前に手を打つことが重要である」と田村氏は語った。 

4.組織として移転価格に対応するために最も大切なこと

最後に田村氏は、組織として移転価格に対応するために最も大事と考えることについて触れた。「移転価格の調査の対応力がついてくるのは、管理職ががんばっている会社」と田村氏は言う。税務リスクがいかに大きいか、粘り強く会社に伝え続ける人がいないと、会社全体の移転価格への対応は上がってこないという。移転価格の担当者が、役員層・事業部に対し、グループ内の価格変更について交渉ができる企業は対応がうまくいく。反対に、移転価格対応が経理部だけの仕事とすまされてしまい、役員層・事業部からのサポートがないケースではうまくいかないことが多い。

テクニカルな面だけではなく、グループ全体のことを考え、良いアドバイスができる人材を大事にすることが、移転価格税制対応への近道であることについて触れ、結びとなった。経営層や管理職に向けたメッセージとして明確にリスナーに届いたのではないだろうか。

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