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パネルディスカッション「海外子会社管理の現状とこれから」GLASIAOUS Next 2019【開催レポート2】

2019.04.12

2回目の今回は、国際会計の専門家や、サイバーセキュリティ対策の専門家を迎えて行ったパネルディスカッションについてご紹介します。

パネルディスカッション「海外子会社管理の現状とこれから」

日系企業の海外拠点数は現在も増え続けているが、海外進出黎明期にはなかったリスクが認識され始めている。従来のノウハウだけでは通用しない時代に差し掛かっている今、改めて海外拠点管理の在り方が問われている。問題の本質は何なのか、これまでとの違いはどこにあるのか、ではどうすればよいのか - 専門家たちが、パネルディスカッション形式で論じる。

 登壇者と経歴はこちらから

はじめに

高山:本日は「海外拠点管理の現状とこれから」というテーマにのっとり、過去から現状の課題・そして今後に向けてという時間軸の中で、4つの設問を準備いたしました。
各パネリストの皆様に、具体的な事例を交えてご回答いただきます。

 1.海外進出企業の課題

①マネジメント
久野: まず「何を対象にするのか」。ここでの対象はヒト、モノ、カネ、時間、情報といった経営資源です。もう一つ考えなければならないのは、「いまの海外子会社はどのような役割を持つか」
日本企業は、戦後は円高不況を受けて欧米に「生産拠点」をつくり、80年代からはコストダウンのため中国やタイ等へ進出しました。ただアジア諸国では日本製のものは高すぎることが多く、現在は「地産地消型」への流れがあります。これまでの発想では「現地で製造する拠点=生産子会社」でしたが、「地産地消型」のビジネスを行うには、マーケティングなども含めて海外子会社へ権限を委譲していく必要があります。海外子会社に自分たちの役割を改めて認識させるところから、マネジメントは始まります。次にヒトなど具体的な対象のマネジメントを行うことになります。

 ②リスク管理
青島:「不正のトライアングル」という言葉があります。動機、機会、理由があれば不正を働く人が出る、というものです。ある企業では、タイ人経理部長を信頼した日本人マネージャが、何が書いてあるか分からないまま、言いなりに書類へサインをし続けていました。その企業では後日、億単位で資金の横流しが発覚しています。インドネシアの化学系メーカーでは異常な仕損発生率を不審に思って防犯カメラを設置したところ、社員と警備員が協力し、夜な夜な原材料を持ち出していたことが分かりました。
これらは「機会」があったがために起きた不祥事です。海外のマネジメントはある意味、性悪説にのっとらねばならないように感じます。

 ③人材管理
長峰:駐在員にも様々な方がいます。駐在歴の長い方だと自ら不正に手を染める場合があります。専門外の仕事もあり、駐在員の負担は大きいため、業務負担を軽減するための様々なツールを、本社から提案すべきでしょう。また、会社というものは現地の人間で運営することが理想的です。事業が大きくなれば様々な分野で高度なスキルが求められます。出来る限り現地で人材を採用し、国内でもDiversify – つまりマルチスキル人材の育成をしていただきたいと思います。

 2.かつての海外拠点管理と現状の違い

①税務リスク
小田:新興国ではアグレッシブな課税が見受けられることがあります。例えばタイでは、税務恩典の考え方について、BOI(タイ投資委員会)と税務当局の見解が食い違い、後に大きな課税が生じた事例があります。インドネシアでは、特定の税務署が大手商社などの日系企業に対して、事業許可と異なる事業を行っているという独自の見解に基づく主張を行い、税金の還付が滞った事例もありました。
一方、印紙税の対象となる文書や、源泉税の対象となる支払、VAT(付加価値税)GST(物品・サービス税)の申告に必要なタックスインボイスの要件を理解し、適切な対応を講じておくことによって税務当局との争いを防げるケースも多くあります。

 ②データ保護規制
渡辺:自国のデータを守る動きが活発化しています。従来は、国境またぐデータに対する厳格な規制はなく、個人情報をふくめ企業情報はインターネットやグローバルネットワーク上を自由にやりとりされてきました。海外進出企業もこの点を考慮する必要がなく、社内システムを構築利用した時代が長く続いていました。
しかし2018年のEU GDPR施行をきっかけに、データ通信に関する考え方は大きく変わりつつあります。例えば中国のサイバーセキュリティ法は、特定データの越境を制限し、自国の中にとどめるものです。これはグローバルに事業活動する企業が、その国の会計基準や労働基準法などを遵守するのと同じように、ITを活用するにあたり、現地国のデータ保護規制法を遵守することが求められる時代になってきたということです。日系企業が進出している多くの国・地域でこうした動きがみられており、注視・対応の必要があります。

 ③サイバーリスク
青島:「不審な通信」(サーバー攻撃を試みていると思しき通信)の件数が年々増しています。20175月にはWannaCryの拡散で情報システムをネットワークから切断せざるを得なくなり、工場が丸一日停止するなどの被害が出ました。日本の企業では標的型メール対策訓練など対策を打っていますが、海外ではそれほど警戒出来ていません。タイの日系金融機関でも、年に34回ほどシステムが停止したことがあります。中には3日間にわたる停止もありました。原因は、従業員が警戒心を持たずメールを開封したことでした。グローバルガバナンスの強化が求められます。

3. 専門家・ITの活用

久野:先ほども申し上げた通り、昨今の海外子会社は従来のような機能型とは異なり、「地産地消型」です。よって駐在員にも、社長・起業家の資質が求められます。まずは親会社、海外子会社、相談相手(専門家)の役割をはっきりさせるべきです。例えば、総額人件費のマネジメントは親会社の仕事です。親会社は誰をいくらで雇うか決めているにもかかわらず、給与計算は海外子会社へ任せっぱなしのことが多い。
また、第三者、つまり専門家を複数使い分けるとマネジメントが難しくなりますので、外部のCFOのような役割を果たすコンサルタントを起用してはいかがでしょうか。加えて内部監査は、その国に詳しい専門家にアウトソーシングしていくのがよいでしょう。

 小田:海外進出の主要な手法として、ゼロからの立ち上げと現地企業の買収が挙げられますが、いずれの場合であっても事前の入念なフィージビリティスタディ(実行可能性検証)は必須です。意外と見落とされやすい点として、入手した外部情報が実態と異なることが挙げられます
例えばWebサイトや書籍には、タイではバックオフィス系の新卒を18,000バーツほどで雇えると書かれていますが、実際にその価格で雇える人材は英語でのコミュニケーションが難しく経験も浅いことが多いため、日系企業において実際にそのような人材に期待できる役割は非常に限定的であるといえます。外部情報に基づく仮説の検証のために現地の専門家を活用することは有用です。また、買収企業に対するデューデリジェンスで検出された事項への対応にあたっても、難易度が高い事項への対応については必要に応じて現地専門家の起用を検討されることを推奨します。

 長峰:親会社が子会社の監査レベルを知らずに結果だけを鵜呑みにせざるを得ない状況は好ましくないので、親会社と海外子会社の監査をまとめて行う場合があります。その際は、標準化したツールやマニュアルを活用し、監査レベルがグローバルで等しくなるようにしています。
また、当社BDOグループ150か国のグローバル会議においても、筆頭課題はサイバーセキュリティでした。一般企業にとっても同様かと考えています。 

IIJGSグローバルソリューションズ 渡辺氏渡辺:海外子会社のIT支援についてよく相談を受けます。(現地で任せられるITベンダーを見つけられず)駐在員が自力でIT環境を構築するケースも珍しくありません。国内で広がっているクラウド・シェアードサービスは、海外国においても積極活用されるべきだと思います。反面、外部サービス依存拡大により事業継続計画上懸念が生じること、インターネット接続範囲の拡大によりセキュリティ脅威が増すことが考えられます。先ほど触れたデータ保護規制は、「データの越境を制限する・データを漏洩させない」対策が規定されています。法的な対応だけでなく、システム面での対応が必要です。

 4.「これから」の海外拠点管理成功のためのキーワード

久野:海外子会社を率いる人間の起業家精神を軸に、親会社・海外子会社・専門家のそれぞれの役割を決めてください。「私にはそこまでの権限がない」と言う駐在員が散見されます。権限というのは本来、自分の責任を果たした人が後から広げるものですから、先に責任の範囲を広げていただきたいと思います。

 小田海外に限らず、管理業務をないがしろにしないことです。直接的に収益を生むことのないバックオフィス業務は、おろそかになりがちですが、投げやりにしていれば税務当局から追徴課税を受けるなど、重要な事業リスクにつながります。また、実態に即した事業・顧客別での業績数値の見える化は適切な経営判断の前提です。バックオフィス業務だからと軽視せず、「攻めの管理業務」といった観点を大切にしていただきたいです。

 青島:言語はグローバル事業標準化の壁となります。海外子会社のマネジメントはローカル人材に任せきっていることが多く、日本では話にならない監査がまかり通っています。これからは、アドミ人材をグローバル化していく必要があると考えます。

 渡辺:GAFAモデルのような、海外現地デジタルデータを収集・ビッグデータ活用するモデルはこれからより活発化していくでしょう。しかし現地データの扱いにあたっては、該当国のデータ保護規制への対応は不可欠です。法務部門とIT部門との隙間に落ちるトピックも出てくると思いますので、専門家のアドバイスのもと部門間で連携することが重要です。

 長峰:利益が出ているのか、出ていないのならなぜなのか、収益構造を常にしっかり考えてください。また、やはり必要なのは責任の明確化です。親会社には、海外子会社に対してと同時に日本国内のガバナンスも考えていただく責任があります。それを認識したうえで、利益をとる体質を突き詰めていただければと思います。

 おわりに

高山:限られたお時間ではありましたが、各パネリストの皆様から、たくさんのキーワードをいただきました。本日はどうもありがとうございました。

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