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GLASIAOUS Next 2019【開催レポート1】基調講演「タニタ式海外戦略」

2019.04.05

3月13日、春らしい爽やかな気候の中、「GLASIAOUS Next 2019~クラウド時代におけるリスク管理とは何か?~」が開催されました。
300名を超える方々に来場いただき、一時は立ち見も出る中、大変盛況なイベントとなりました。

数回に分けてレポートを掲載いたします。初回はタニタ前取締役会長の谷田大輔氏をお迎えした基調講演「タニタ式海外戦略」です。

基調講演「タニタ式海外戦略」

「タニタ式」 - この言葉をきいて何を思い浮かべるだろうか。
リバウンドゼロを謳う「タニタ式ダイエット」はこの国に健康志向ブームを巻き起こし、社員食堂として始まった「タニタ食堂」はいまや全国に店舗を展開している。海外でも、TANITAといえば健康を増進するソリューションとして名高い。
ヘルスメーター分野において世界No.1の座に君臨する株式会社タニタ(以下、タニタ)は、もともと「プレスの得意な町工場」だった。「三期連続赤字」を出していた同社は、いかにして世界のタニタへと躍進を遂げたのか。その立役者である前代表取締役会長 谷田大輔氏みずから、ストーリーを紐解く。

『ヘルスメーター世界No.1』を目指す

株式会社タニタの前身 株式会社谷田製作所は、『事業の三本柱』としてライター・トースター・ヘルスメーターを製造していた。このうちヘルスメーター事業だけが黒字であることを突き止めた谷田氏は、「赤字を減らすというよりは黒字を伸ばす」方針のもと、ヘルスメーター事業への注力を決定した。高額な部品の内製化や秋田の製造拠点(株式会社タニタ秋田)の設立を経て、全社としての経営は黒字に転じた。
しかし3つのうち2つの事業から手を引いたとあって、社内には暗いムードが漂った。『事業の三本柱』に倣って「体重計の三方向」を打ち出すに加え、目標を『ヘルスメーター世界No.1』としたのはこの時である。

谷田氏は「いくつも技術があればこそ会社の方向が定まりにくい。ぜひ明確な目標を作っていただきたい」と語る。

 『コンセプトを変える』

こうして事業の方針は定まった。「シェアは販路がつくられるごとに増えて」ゆき、体脂肪計では国内シェア100%を達成した。
この時点で谷田氏は海外展開を視野に入れている。同氏は米国各地を訪問する中で、「何が財を成すか」という視点を得た。例えば主要産業が船、鉄道、自動車へと移り変わった際、「なぜ船会社は”人と貨物を運ぶこと”をコンセプトとしなかったのか?」このコンセプトを持っていれば、自然に鉄道、自動車へと事業を切り替えられたはずだと谷田氏は語る。
ひとつのコンセプトに基づき、時代の要請にあわせた事業を展開する。タニタは、「健康」というコンセプトのもと、多種多様な重量計を生み出し、レストランを展開し、体脂肪計や睡眠計などかつてない製品を提案し続けている。

 世界のタニタへ

谷田氏の「マインドが全て海外に変わった」きっかけは、当時日本でタニタの売上の30%程を占めていた得意先の「タニタ製品を買わなくてもよい」という言葉だった。国内で安穏としていれば売上の30%を失いかねない事態に危機感を持ち、本格的な海外進出に舵を切ったのだ。
 製造コストを抑え、世界一の競争力獲得を期待できる場所はどこか。多くの候補を検討した末、タニタ初の海外製造拠点は中国となった。食事に不自由しない、筆談で意思疎通が図れる、物理的な距離も近いといった利点もあったという。日本国内の工場とは違い、社外からの部品調達が出来ない海外の工場では、部品の製造から最終製品にするまでのプロセスをすべてカバーすることとなった。ひとくちに「工場」といえど環境が変われば有り様が変わる。
 生産力が向上すれば、より広い販路が必要となるのは言うまでもない。
米国進出にあたって谷田氏は、米国案件の経験をもつ営業担当者を1名現地へ派遣した。現地では従業員を1名採用し、2人体制の販売拠点を設立した。
「無理を言って」営業担当者を送り出すにあたって、同氏は米国でのビジネス歴が長く、現地でサポートの出来る知人をコンサルタントとして手配した。タニタはドイツを皮切りにヨーロッパへも進出しているが、その方法についても谷田氏は「米国進出時と同じですね。トースター事業で付き合いのあった方に『ヨーロッパ進出したいです』と伝えて、ヨーロッパを担当したことのある営業を1人送る。現地の女性を1人採用し、コンサルタントと3人でいろいろと議論してもらって、もちろん私も時々出かけていって。」と語る。
 さらに拠点を増やし、各拠点の事業が成長するにつれて、日本から派遣する人数も段階的に増やしていった。現地の人材採用には、現地のリクルート企業を利用した。各拠点の事業の大きさに応じて人員を配置し、現地の雇用については現地でプロの力を借りる。
こうしてタニタ海外拠点の組織が作られていった。

 海外ビジネスならではの難しさもある。
オンリーワンの製品を持っていようとも安心はできない。当初米国に体脂肪計を持って行った際は、「これは日本人のデータだろう」と言われたという。どんな商材でも海外に出れば、グローバライゼーションを避けては通れないのである。「単品競争は出来ませんから、ハード・ソフト・サービス全て入った形でやらせていただいています」と谷田氏は言う。
さらにリスクもある。谷田氏は、中国で大幅な円安の進行に悩まされたと振り返る。この他にも海外への利益移転を疑った当局に査察に入られたエピソードや、40億円の売上に対して20億円の税金を課せられたエピソードを語った。谷田氏は「何かをするにもリスクはある。しかしやらないのもまたリスクである」とも言う。

 これからの海外ビジネス

谷田氏は合理化と人材育成の観点から、「上10%を抜いて新規事業にあてる」ことを提案した。「最初は当然まわりませんが、1年もしないうちに完全にまわるようになる。工場でも2回これを行った。人を10%とって残ったメンバーでまわさざるを得ない状態をつくれば、業務の10%を合理化できる。20%とれば20%を合理化できる」と同氏は言う。また、現在「帰国定年退職者が多く出てきている。こうした人材も活用していかれるのが良いのではないかと思います」と語った。
 また、長い目で見た投資が大切だという。タニタも将来への投資としてフィッツミー、タニタヘルスリンクという2事業を立ち上げている。
 ITの活用について谷田氏は、インターネット販売の収益性の高さに触れつつ、「海外拠点マネジメントはいかにあるべきか」というテーマは今後も課題であると指摘した。

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 海外で新たに事業を展開するとはどういうことか、そのマネジメントはどうあるべきか。IT化とグローバル化の時代でビジネスを担う私たちに、いま問われている。

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